梶よう子 著
赤い風が吹くー--。
三国(みくに)山脈から降りてくる風が、赤城颪(あかぎおろし)、日光颪(にっこう)となって武蔵野(むさしの)台地の乾いた土を掬(すく)い上げるように巻き上げる。
茶褐色の細かく軽い砂つぶは、強風にあおられ舞い上がると、あたりを赤く染め、視界を閉ざす。
春と冬に吹く、この季節風を土地の者たちは、赤い風と呼んだ。
【以上、出だしの文面をそのままに】
時は貞享(じょうきゅう)二年(1685)、冬。
新田開発制作を勧める川越藩 鶴間村を中心とした村とそこに住む人々の葛藤。
開発地の境界を曖昧にした施策が騒動の原因です。
時の将軍徳川綱吉まで発展します。
『目次』
第一章 秣場(まぐさば) 牛馬の飼料にする草。
第二章 国替え
第三章 三富(さんとめ)
第四章 黒鍬(くろくわ)
第五章 付け火
第六章 富と福
『主な登場人物』
正蔵 ー- 大塚村の百姓の倅。父・吉次郎を十歳のときに騒動の一因で亡くす
柳沢保明(吉保)ー- 徳川綱吉の側用人。川越藩主
荻生惣右衛門(徂徠) ー- 柳沢保明の近習
武左衛門 ー- 大塚村の名主
おそで ー- 武左衛門の家の奉公人。元は捨て子
●
『赤い風』を手にしたのは2回目です。
この本の表紙に描かれた登場人物のたくましい顔がとても気に入っています。
口を真一文字に閉じて、試練に耐え、根性のあるしっかりと生き抜く顔です。
幼子でも。
そう思いませんか。
これからでも、この本の本質が分かろうというものです。
初めて目にした人はどんな本だろうかと興味も湧くのでは。
本の表紙はとても大事と思います。
●
世は人の世。
人と人の繋がりで成り立つもの。
時代は移り変わろうと、どうしても上下関係が生じます。
持てる人と持たざる人。
遠い昔から現在においても、それは変わりませんね。
事件、事故を見るにつけ索莫とした気持ちになることもあります。
しかし、多くの人が如何なる場面に直面しても倫理観をもって自然と対処していると思うのです。
いつの世も思いやりと、やさしさと、誠実さが大事ですね。
あと一つ付け加えれば「生きて行こうという力強さ」。
以上、『赤い風』の読後感です。


【関連する記事】
川越はサツマイモで有名ですがこうなるまでには武士と百姓は対立と協力を繰り返しながら二年と言う過酷な歴史が有ったのでしょう。今でも春一番が吹き荒れると群馬、埼玉県は砂塵が舞って沙漠の様になります。洗濯ものは外に干せません。
「赤い風」の表紙とてもいいですね。
確かにたくましいお顔ばかり、梶さんの本は
読んでいなくて、読んでみたいと思いました。
実際にはそのとおりか同課は誰にもわからないですよね。
柳沢吉安の名前は知っていましたが川越藩主って知りませんでした。
踏みつぶされても生きなくてはいけない、時代が変わっても同じですね。
少し前まで時代小説は読まなかったのですが、最近少し読んでみて思うことは
いつの時代も同じなんだなぁ。
良くも悪くも人も世も変わらないんですね。
と言って諦めは良くないとは思いますが。
なかったです。
早速、図書館に申し込みました。
まずは「川越」に惹かれてしまいました。
川越って大好きなんです。
娘一家が埼玉に住んでいますので、川越は何度か訪れています。
本、早く来ないかなぁ、、、
私も歴史小説は好きで、色々読みましたが、このお話もノンフィクションなのでしょうか?
表紙の絵を見ても、農民たちの力強い生き方が伝わって来そうですね。
私は登場人物が多い物語が苦手でして、
名前とそこ迄の設定がぐちゃぐちゃになって、
また最初から読むことになり、
疲れてリタイヤも数々なれど、という事になります^^;
登場人物が多い歴史物語りは「大河ドラマ」に限ります^^)
でも、仰ることはよく分かります。
上下関係や仲間意識、目指すものの姿や理想、
困難には倫理観を持って対処。
善人であればですが、皆繋がっていますね。
昔から変わっていないように思います。
怠けて収穫を得ようとする集団が、これを狙っています。
海外から^^;
これらの悪人、
比叡山にお参りして、心を入れ替えて欲しいです。
もし手にしましたらご感想だけでも。
私の場合は時代小説を中心に読んでいます。
ご報告で一番驚いたこと。
砂塵が舞うということです。
洗濯ものは外には干せない!!!!!!
ウ~~ン!!
鹿児島の桜島の降灰と一緒ですね。
【赤城おろし】
【日光おろし】
これは頭に入れておきます。
本の表紙から中身を想像する。
素晴らしいことと思います。
梶よう子さんの作品。
鹿児島県立図書館でも数多くの作品があります。
物語ですから事実と違うところは多く、それも当然でしょうね。
柳沢保明さんが川越藩主であったか知りませんが物語ですから。
ただ物語の、その年代の人々の生きていることを想像しながら読む。
物語ですから。
歴史小説そのものは好んで読みません。
しかし、江戸時代の庶民の暮らしの中からヒントを綴った作者の意図を考慮すると迫り来る雰囲気もあります。
そこが時代小説のいいところでしょうか。
全くそのとおりですね。
県立図書館の蔵書の中で小説、特に時代小説には目がありません。
私は松本清張さんの小説ファんです。
本棚には100冊ほどあります。
いつかはジックリ読んでみたい。
楽しみです。
『赤い風』
●土地の境界にまつわる話。
●それに水問題。
この2つがポインで小説は回ります。
さすがですね。
女性作家の多くなったと聞きますが、梶 よう子さんは、その先駆者でしょうか。
ありがとうございます。
『赤い風』
図書館にお申込みするとは。
感激します。
また読後感ともありましたら幸いです。
【川越】
訪れたことはありません。
本の主台地になると、想像することしきりです。
いイエティさんの読書量は世界で私が一番と認めます。
ジャンルが多岐にわたりあり、ブログ報告でも圧倒されます。
イエティさんの紹介の本を何度か読みましたよ。
なかなかこのような表紙はありませんよね。
「手に取りパラパラとめくる」
記憶に残る表紙と思いました。
アルクノさんの着目点には一目置いている私です。
要点を突いて文章化する。
いつも、そうだ!そうだよな!と首を振りながら見ていますよ。
本も悪書と善書があると思います。
自分がどう判断して手にするか。
本を通じて活かすも殺すも自分次第と。
時代物が好きで良かったです。
『赤い風』
梶 ようこさん著
時代小説から紐解くといつの世も人の生きる様は一緒ということですかね。
私の場合は鹿児島県立図書館も近くて、考えようでは我が家の図書館。
ここは薩摩藩の城があった場所でもあります。